日常に咲く花
キャンバス布にアクリル
花は色々なアーティストによって作品のモチーフとされてきた。現在では消費経済の中で、消費者のニーズに答えるべく、多くの工業製品のデザインとして大量生産の一部に取り込まれている。また花は色々な文化においても重要な役割を担っているとも言える。
矢作は人の手によって生み出された花のイメージをモチーフとして作品に取り入れ、その花に新たな意味を付け加え、絵画や彫刻を生み出す。それらは再び普段の生活の中に違った意味で装飾されることになるのである。
おそらく我々の身の回りには実際の花よりもプリントされた花柄や造花の方が生活を彩っていると言っても過言ではないであろう。例えば矢作の制作プロセスは、そのプリントされた花柄をデッサンし、キャンバスに筆で絵を描いていくという、ごく普通なスタイルを取っている。そして大量生産された花柄は彼の手によって一枚の絵画として姿をかえることになるのである。
矢作が制作の中で重要なテーマとしているのはオリジナルとコピーにある。一般的にはオリジナルに価値があり、コピーには価値がないと思われがちであるが、矢作はコピーされたものに価値を与えていくのである。日常に埋もれている何の価値もないオリジナルのものを、矢作は普段から作品のモチーフとしている。そしてその忘れ去られてしまいそうなオリジナルからコピーされたものが永遠に残る可能性のある作品へと生まれ変わるのである。また矢作の作品は一見、シンプルに見えるが、完成度が高くとても細かい作業をし、作品を仕上げている。
この「日常に裂く花」は、あらためて我々の身の回りにある、あまり気づくことのないものに目を向けるきっかけとなり、普段の生活に変化を与えることになるであろう。
ベラクルス州立大学
マイテ ゴンザレス リナヘ